事故紹介(海外自転車旅行中の事故の事例)
発表:シルクロード雑学大学 長澤法隆
http://www.geocities.jp/silkroad_tanken/
事例 怪我・病気 事故の状況 年齢・性別・自転車歴 発生年月と場所 対応 原因 結果 その他の対処 事故を防ぐために
【事例1】 頭部打撲 上り坂で、側溝に落ちて壁面の岩に頭部を打つ 68歳
男性
購入直後
中国
1993年5月
スピードも出ていないし、痛みもないので伴走するバスでの移動に 当人はかなり疲れていたが、若い人に負けたくないので走行を続けていた。前方を見るゆとりが無く、下を向いて走行。 ヘルメットが凹んだだけで、けがはない。バスでの移動としてもらう。 事前にトレーニングを行う。疲れたらバスに乗る
【事例2】 顔面打撲 集団走行中、マンホールのふたが開いているのに気づかず突っ込んで転倒。前歯が欠ける。 20歳
女性
購入直後
中国
1994年8月
同行の医師による打撲箇所の手当て。バスでの移動。 蘭州の街の中心地で、交通量が多いので2列で集団走行をしていた。隊列がバラケ無いことに気を使うあまり、車間距離を短くして追いかけることに気持ちが向いていたため。 口の周辺を打撲していたので、伴走しているバスでの移動とする。同行している医師の意見も聞いて判断。バスでの移動は1日。痛みや熱発熱などが無いので翌日より走行。 まずは、病院へ連れて行ってレントゲン検査を実施すべきだったと反省。 車間距離をあける。後れても前の人を追いかけないで、全体を考えながらもオーバーペースにならないようにする。事前のトレーニングを行う。集団走行を体験する。
【事例3】 肩の打撲 坂を上ったところで転倒 55歳
男性
購入直後
中国
1996年8月
伴走のバスで移動 上り坂を軽いギアで進んでいた。峠に到着しても、車間距離が詰まっているのに気をとられて、ギアチェンジをできなかった。ペダルが空回りして転倒。 肩を強打。一時腕が上がらないのでバスで移動。翌日より走行。 レントゲン検査をしたほうが良かった。 車間距離をあける。人のペースにも合わせられるような体力を残して走行する。
【事例4】 足の裏を切る 集落のため池で水浴び中に足の裏を切る 40歳
男性
購入直後
中国
1996年8月
破傷風が怖いので、バスで100キロ先のハミの病院へ移送。傷の手当てと破傷風のワクチン投与。 ため池で裸で水浴びをしたこと。新疆ウイグル自治区に入っており、イスラム圏。男性とは言え、人前で裸になってはいけない地域。地元の子供たちの真似をして、水浴びをしたため、ガラス片などを誰かが投げ入れたように思える。 病院に2日間入院。4日目に自転車に乗る。 イスラム圏では、水浴びの際にも裸にはならない。また、水浴びをするときは、サンダルを履く。
【事例5】 鎖骨骨折 緩やかな下り坂で転倒 28歳
女性
購入直後
中国
1997年8月
コルラという大きな街を出発したばかりなので、コルラの病院でレントゲン検査。腕の固定。ホテルで過ごしてもらう 風邪薬を飲んでいたというので、暑さで居眠り運転と思われる。 コルラへは、帰りにも立ち寄るので、ずっとコルラで過ごしてもらった。 風邪薬を飲んでいるときは、バスで移動する。
【事例6】 左腕の骨折 緩やかな下り坂で転倒 57歳
女性
購入直後
中国
1998年8月
同行の医師は病院での検査を勧めるが、本人が同意せず。翌日、腕がはれてきたので、2日後に病院へ移送。本人の同意を得る。結局、日本へ先に帰って治療。 暑さと疲労で前方不注意となり、落ちていたレンガに乗り上げての転倒。 カシュガルという200キロほど先の町でレントゲン検査をして、早期に治療するように再三説得するが、本人が応じなかった。後日、腫れと痛みで本人も治療に同意する。帰国後も、リハビリに時間を要した。 強制的に病院へ移送したほうが良かった。 疲れたらバスに乗る。無理をしない。バスに乗りたくなかったら、事前にしっかりとトレーニングを重ねる。暑さになれるように、国内ではクーラーの温度を30度に設定するなど生活面でも工夫する。
【事例7】 全身打撲と右上腕部陥没 フリーランで下り坂が続いていた。転倒し、意識不明の状態で後続のメンバーが発見。 60歳
女性
5年
キルギス
1999年8月
ナリンの近くで発生。400キロ離れたビシケクへ移送。英語を話せる女性のメンバーが同行して世話をした。 フリーランで、前のメンバーとの距離が離れたので下り坂でもペダルを踏んで追いかけたと思われる。また、転倒箇所の手前の路面に亀裂があり、この亀裂にタイヤを取られたと思われる。ブレーキの痕跡は無い。 ビシケクで入院し、他のメンバーと一緒に帰国。車いすでの帰国となった。 保険に入っていたので、医療用のジェット機をチャーターして」直ぐに日本へ移送する。 下り坂でも風景を見る、こころのゆとりを持って進む。自分の体力と体調にあったスピードを受け入れる。
【事例9】 左顔面打撲、左上打撲 きれいに舗装された長い下り坂、突然ダートとなる。時速40キロ以上のスピードでダートに突っ込み、ハンドルをコントロールできなくなり転倒 36歳女性4年以上 カザフスタン2000年 伴走の乗用車で同行の医師、日本語ガイド(女性)と一緒に、200キロ先の大きな街まで移送。病院にてレントゲンを含めて検査、治療。病院へ入院するかホテルでの滞在でいいかは、診察した医師の指示に従うように、日本語ガイドにも確認。 通常、30分走ったら、5分か10分の休憩としている。しかし、このときの走行リーダーは、自分の力に合わせたのか、45分に1回の休憩、下り坂も時速60キロほどで走行していた。後続の人の力量を考慮しないでスピードを出しすぎたのが一つの原因と考える。また、疲れていたり、もともと走力の弱い人は、走行リーダーがスピードを出すと、下り坂で、自分の力以上のスピードで下って、遅れを取り戻そうとする。わたしが「ダートだ」と後続の人に伝えたが、けがをした女性は、スピードを抑えきれずに、私を追い抜いてダートに入った。わたしがダー 200キロ先、大きな病院のある街へは、他のメンバーは、二日後に到着した。それまでの間、けがをした人は、医師の指示に従って、ホテルで過ごした。レントゲンの結果、頭部も含めて骨に異常はなかった。ただし、頭部なので、安静にして、ホテルから病院へ通院していた。転倒の際にペダルが曲がってしまい、自転車は乗れなくなった。帰国まで、けが人はバスで移動しながら、行く先々の病院で、治療を行った。 他のメンバーと合流した2日後には、歩いて自由に行動できた。口の内部もけがしていたので、食事はおかゆなどの特別食を準備してもらった。アルコールを飲まない人だったので、その後の過ごし方に気を使う必要がなかった。 走行リーダーは、自分を基準として休憩やスピードを決めない。その日の体調によって遅れる人、もともと走行するっ力量の弱い人を考慮して、休憩のタイミングやスピードに気を配る。また、ダートなどの場合は、後続者に「ダートです」などと状況を伝達して、注意を喚起する。1日の全体、休養日までの全体、走行を終えるまでの全体の日程と体力を考慮して、休憩やスピードを決めたらいいと思う。午前中から目いっぱいのスピードで走ったりしない。腹八分目、スピードも八分目とし、体力を残しておいて、いざというときにスピーディーに移動できるよう
【事例8】 脳梗塞 トライアスロンにも出場しているようなメンバーが、ホテルのベッドで右側にだけ落ちる 57歳
男性
10年以上
ウズベキスタン
2001年8月
ホテルへ医師を呼んで診察。病院で検査。2日後に、医療用のジェット機をチャーターして日本へ移送。 下痢のためにバスで移動していた。「下痢のときは、水分を補給しないで治るのを待つ」という主義の人で、脱水症状が脳梗塞の引き金となったと思われる。 ビザカードのゴールドに入っていた。カードに保険も付帯しているというので、当人は海外旅行傷害保険に加入していなかった。医療用のジェット機をチャーターする際、保険に入っていない場合は、現金の振込みを確認して、飛び立つ。このケースは、フランスからジェット機を呼び、サマルカンドで病人をピックアップして羽田空港まで。1300万円だった。旦那さんの名義で貯金していると、奥さんが下ろすのも厄介である。また、曜日によっては、現金を引き出せない。 海外旅行傷害保険に加入していれば、医療用のジェット機を直ぐに飛ばすことができた。現在も当人は、右半身が自由でない。保険に入っていればと、悔やまれる。 水分補給はマメに。ポカリスエットなど、ミネラルも含む吸収のいいドリンクも準備したい。スイカやメロンなどのフルーツも休憩の時に食べるようにしたい。