装飾用のバックルも多彩で、材質ではめのう、玉(ぎょく)、孔雀石、銅が使われ、形としては円形、長方形、それに不規則形がある。
『2匹の虎、大豚に噛み付く』と名付けられた青銅の作品をご覧いただきたい。


 
 高さ12センチ、幅17センチ。動物と動物の死闘。真に迫った、躍動感。豚の上にのしかかる虎の尾に蛇が噛み付いている。このデザインを決定した人物、鋳造した技術者、職人はいったいどのような民族だったのだろうか? 作られた時代は紀元前、当時の中国のどの地方にこのようなデザインの青銅器があるだろうか。白川静はしきりに「スキタイ系かと思われる」を繰り返すのだが。

  ちなみに、「スキタイとは、はるか西の黒海(こっかい)の北一帯に強力な遊牧騎馬国家をきずいた民族のことである。すすんだ馬文化をもっており、(略)前7世紀頃から前3世紀頃にかけて強大さをほこり、ヨーロッパの諸民族を畏怖させていた」(西野広祥『馬と黄河と長城の中国史』PHP文庫)。スキタイ系文化の影響は強く感じられるし、そう指摘する学者もいるのだが、ここ中国・雲南省東南部と南ロシアはあまりにも遠くかけ離れている。

宍戸 茂 「西南シルクロード紀行」
  第2章 から

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